こうしてあなたはリンクを踏まされる!”釣り系”ネットニュースの手口とは
こんにちは、小野ほりでいです。
どうして私たちは、ネットニュースをはしごしてしまうのでしょうか?
そこには、人間心理を突いた巧みな罠が…。
<登場人物>
エリコちゃん
情報社会の下流で暮らす女の子。
ミカ先輩
リテラシーと引き換えに幸せを失ったエリコの先輩。
グッパァ~…スヤスヤ…
たあああああああ~~~~~~!!!!
グッパァ~…スヤスヤス…
ああ。エリコちゃんが、また業務中に寝たりアボカドを投げたり寝たりしている。
ハッ!? 先輩、すみません…。
睡眠不足なの?
はあ、実は昨日、寝る前にちょっとと思ってまとめサイトを見てたら止まらなくなって…。
ダメじゃないのエリコちゃん、まとめサイトばっかり見てたら、インターネットで得た知識で他人を見下し自分は優れていると勘違いしてはいるが、実社会ではゴミ同然の扱いを受けている典型的ネチズンになってしまうわよ。
そんなことはどうでもいいんですけど、インターネットの時間を減らしたいんですよね…。
気になるタイトルのニュースがあると、思わずクリックしてタブが増えていく気持ちはわからないでもないわ。
それで開いたサイトがまたリンクだらけでどれを探してたのかわからなくなって、結局また新しい記事が気になって、新しいタブで開いちゃってどんどんブラウザが重くなるんですよね。
エリコちゃん、アフィリエイターのいいカモね…。ああいうサイトは、記事のタイトルにフックを仕込んでいるから、何も考えずに見てるときりがないわよ。
フック、といいますと?
思わずクリックしてしまうように、タイトルを工夫しているということよ。例えば…。
こういうリンクがあったらエリコちゃん、踏む?
踏まないでしょ。
じゃあ、これだとどう?
ああ、踏みたい!! どうせしょうもない内容だとわかっていても、その行方を確かめずにはいられないわ!!
こういうふうにタイトルを工夫することで、どうってことない記事をクリックさせる技術はこの連載でも多用しているのよ。ほかにもどんなものがあるか知りたい?
果たして今回もためになるのだろうか…。
一抹の不安を抱きつつ、私は先輩の話を聞くことにしたのである。
1.ストレスを与える
サイトのリンクをクリックさせるために最も多用される手段は「とりあえず一度不快にさせること」なのよ。
ニュースタイトルで不快にさせるんですか?
正確には「恐らく不快にさせられるであろう内容を想起させる」ね。
人間は不思議なもので、目の前にストレスの原因になりそうなものがあると、よせばいいのに中を覗いてみたくなってしまうのよ。例えば…。
・この4コマが分からない奴はアスペらしいwwww
もし自分にわからなかったら? という不安を煽って、そのストレスの解決のために衝動的にクリックさせるタイプのまとめね。内容は計算問題だったり、いろいろよ。
・ファッション誌で◯◯女子がどうたらこうたらwwwww
雑誌やネットメディアがいるのかいないのかもわからない男子・女子に、鼻につくことを言わせて記事にしたものを勝手に取り上げると、だいたいアクセスが稼げるのよ。
突っ込んでるつもりが突っ込まされてたんですね…。
またバカが◯◯で炎上wwwとかそういう類の記事もそうだけど、非常識な人が現れる→ネット民が叩く、というようにストレスの発生から開放までがお膳立てされていると、ネットの人がとても喜ぶのよ。
なるほど…モヤっとしたストレスを提示されると、それに対処せずにはいられない人間の性質を利用した、悪逆非道の手法なんですね。
へぇ~。そうなんだぁ~。
そうなのよ、ケネス。
2.中途半端に言う
・結果wwwwwwwwwwww
最初に例を出したように、本当にどうってことない記事でも、主旨自体をぼかすことで中身が気になってしまうものなの。
結果wwwwwwwwwだけでも、あやうくクリックするところだったわ。
・◯◯女子はもう古い! 最近は◯◯男子が登場
エリコちゃん、どうしてインターネットで◯◯男子とか○○女子とかいう言葉が無尽蔵に生まれるか知ってる?
なにか印税とかでも入るんですか?
意味のわからない言葉を作っておけば、とりあえず気になる人からアクセスしてもらえるからよ。
そして、不快に思われようが同意を得ようが、何らかのリアクションをさせた時点で言葉を作った側の勝ちなのよ。すべては仕組まれているの…。
炎上マーケティングスレスレなんですね。
ちなみにこの連載でも、繊細チンピラ、蝉ガールという言葉をあたかも元々ある言葉かのように扱ってるけど、そんな言葉は存在しないから要注意よ。
マジで?
嘘を嘘と見抜けない人にインターネットを利用するのは難しい
そうねカール、あなたの言うとおりだわ。
3.願望に加担する
・かわいいのにモテない女子にありがちな行動
そんなわけないのよ。かわいいと大体モテるわよ。
うるせえな。
このタイトルみたいに、「あなたは実は間違ってないんですよ」みたいな記事を書いておけば、自分は間違ってないと思いたい人にウケるのよ。
先輩、また誰かの反感を買ったら、責任とってくださいね。
・男は~女は~、理系は~文系は~、ゆとりが~団塊が~
こういうやつはこう! とカテゴライズして分析だの批判だのすると、自分が何らかのカテゴリに属していること自体を選民意識の根拠にしている人たちにウケるのよ。
う~ん…話を聞くに、どうやら私たちの下世話な興味と需要そのものが、昨今の薄汚れたインターネットを作り上げてしまったようですね。
こんな人たちが、テレビのワイドショー叩きをしてたとは驚きね。
あらダニエラ、相変わらず歯に絹着せぬ物言いね。
4.嘘をつく
もういっそ、嘘をついてアクセスを稼いでしまおうというところに着地したウェブサイトも結構あるのよ。
ここがそうじゃないですか?
それについては申し訳なく思ってるわよ。でも、嘘をついたぶん内容だけは少しでも不快にさせないようにがんばるから許してよ。頼むよ。
それはわかったけど、本当だったら面白いけど嘘だったら面白くない程度の内容で釣るなら、それは普通に騙してるのと同じだし、そのときはめちゃくちゃ叩くから覚悟しろよ。
もう、ヨシュアったら手厳しいわね…。
5.批判する
そして例示するまでもなく、このサイトが毎回使ってる手段、「悪口を言う」よ。
悪口を言うと、とにかく誰かを叩きたいが自分にはそれだけの言語能力のない連中から、熱い支持を受けることができるのよ。いいえ、それはよく言えばの話ね…。
本当は毒舌の人ってみんな「忌憚なき自分像」に踊らされているだけなのよ。おもしろがって安全圏からけしかけられているだけなのに気付かないで、愚かね…。
先輩…。
本当はわかってるの、こんなの何にもならないって。でも、めっちゃアクセス稼げるから辞められないのよね…。
(クズだ…)
そんなことないわよ、ミカ。
キャシー!?
僕たち、はみんなミカの言うことが好きなのさ。
イェリオット!?
そうだよミカ、自分自身を疑ってはいけないよ。
えーと…誰!?
気にすることないよ、ミカ。
君はそのままでいいんだよ。
人間、変わることなんてできないのよ。
死んだらみんな、灰になっちまうのさ。
ケネス! カール! ダニエラ! それに、ヨシュア!
ありがとう、みんな、あたし、あたし、うっうっ…。
待って先輩…そいつら言ってる内容が堕落してるよ!
エリコちゃん、今までごめんね、何回も炎上に巻き込んだりチョップしたりしてごめんね…。
先輩…。
エリコちゃん…。
(おわり)