”超”初級サブカル女子入門
こんにちは、小野ほりでいです。
みなさんは、サブカル女子に憧れたことはありませんか?
サブカル女子は、資格がなくても誰でもカンタンになれるものなのです。
今日は読み終えるまでのたった10分で、サブカル女子に変身してしまいましょう。
<登場人物>
エリコちゃん
閑散としたベッドタウンで、文化を知らずに生きてきた女の子。
ミカ先輩
その昔”サブカルの門番”と恐れられたサブカル女子界のカリスマ。
あっちゃ~! 藤隈山道重の「ドロドロズリン」を落としてしまった~!
さっそく拾い直して、と…。
あっちゃ~! また落としてしまった~!
私ったらおっちょこちょい~! テヘー!
何やってるの、エリコちゃん?
あら先輩、知らないんですか? 藤隈山道重の「ドロドロズリン」。
私、最近読み始めたんですよ。
知ってるわよ、サブカルの入門書って言われてるような本じゃない。こないだまでジャニーズの追っかけだったエリコちゃんが、いったいどういう風の吹きまわし?
今も追っかけてます!
実はちょっと前に、こういうことがあって…。
~回想~
~回想おわり~
というわけなんですよ。
あらまあ、”エリコちゃんの話がつまらないと言われる事案が発生”ね。
どうして男って、付き合う前は外見だけで判断するくせに、それ以降は話がつまらないとか趣味が合わないとか最初に度外視していたことにクレームをつけ始めるのかしら。
あとねエリコちゃん、相手の男カーディガンを着てるじゃないの。カーディガンだけには気をつけなさいよ。カーディンガンを着こなす男なんてろくなもんじゃないわよ。
話進めていいですか?
うむ。
で、一念発起して「ワイはチャンピオンになるんや、サブカル女子のチャンピオンになるんや!」って思ったんですよ。
話が繋がってないけど、要するに彼氏がサブカル男子なのね。
私の知らないことをたくさん知ってるところに惹かれるんですよね。
今に、そこにムカつくようになるわよ。
だけど、なんで先輩この本のこと知ってたんですか?
私も昔は、エリコちゃんの彼氏と同じような趣味だったのよ。
今は、もう追いついていけてないけど…。
じゃあ先輩、私がどうやったら一人前のサブカル女子になれるか教えてくれないですか?
人に聞いてる時点でダメだと思うけど、いいわよ。
サブカル女子の五箇条
サブカル女子になるには、たった五箇条を守るだけでいいのよ。
サ、サ、サブカル女子の五箇条!!!!????
うん。
サブカル女子の五箇条その1:伊達メガネをかける
内面だけでは補いきれない知性の不足を外見で補いましょう。服屋とかに売ってる、テッカテカの伊達メガネを用意するのよ。
もともと目が悪い人はどうするの?
そういう場合は、コンタクトで視力を矯正してその上からメガネをかけるのよ。エリコちゃんは目が悪いんだっけ?
2.0です
やっぱりな。
私のお下がりだけど、これを使うといいわ。
ありがとうございます、先輩!
似合いますか?
エリコちゃん、メガネかけると画風変わっちゃうのね…。
そしてさらに…ジャジャーン!
こないだ半額で買った、Superflyとかが頭に
つけてるやつ~~~~~~!!!!
サブカル女子っぽいですか?
伊達メガネのことは、いったん忘れましょう。
サブカル女子の五箇条その2:私オシャレでしょtumblrの開設
tumblrってなに?
tumblrっていうのは、”引用無罪”というスローガンのもとに画像、文章等ジャンルを問わずあらゆるコンテンツが日夜無断転載されているインターネットの墓場みたいなサイトよ。
すごい! 天国みたい!
でも、間違ってもおもしろコピペやGIF画像をリブログ(※引用・投稿すること)してはダメよ。サブカル女子がリブログするコンテンツは、以下のようなものに限られているの。
私オシャレでしょtumblrの例
・美術展のスナップ
知り合いの展示の告知を兼ねていれば、なおいいわ。
・まったくいやらしさを感じさせない、白黒や外国人のヌード写真
こういうものをあえてリブログして、性に対する寛容さをアピールするのよ。
・セーラー服の女の子がなんかしてる写真
とにかくウケがいいのよ。
・皿の上に整然と並べられた、オシャレな野菜の画像
からあげとかラーメンはダメよ。
・動物の死骸や人間の生傷など、ちょっとグロい画像
独特の美的感覚を持っていそうな感じを醸し出して、威嚇するのよ。
どう、わかりやすいでしょ?
めんどくさそうなんで、やめときます
サブカル女子の五箇条その3:幅をきかせる
サブカルのひとつの大きなメリットは、意外とカンタンに表現物の作者や関係者に会えることなのよ。
西に漫画家のサイン会があれば出向き、東にバンドのライブの打ち上げがあれば顔を出し、そこで会った人たちからさらに人脈を広げていくの。
でも、一般人が勝手にそんな場所に参加したら変に思われないですか?
大丈夫よ。イベントごとの打ち上げには、絶対に数人は女だからというだけで参加してるグルーピーがいるし、知らない女が一人や二人増えたところで気にする人なんていないわ。
なんでこんなに詳しいのかよ…。
作品を読んでたり曲を聴いてたりよりも、”会ったことがある”の方がずっと強い武器になるのよ。エリコちゃんも今度連れて行ってあげる。
私はインターネットで会うから大丈夫です。
サブカル女子の五箇条その4:メインカルチャーを脱却する
というわけでエリコちゃん、流行りモノの漫画やCDが棚にあるのは大きなマイナスよ。彼氏に見つかる前に私が引き取ってあげるわ。
い、嫌やー! 苦労して集めたワンピース全巻を手放すなんて…!
すみませんでした…預けます…。
サブカルをなめるんじゃないわよ。
サブカル女子の五箇条その5:サブカルにすら牙を剥く
いいこと、サブカルはメインカルチャーのような緩みきった慣れ合いの世界とは訳が違うの。サブカルの道に一歩入れば、ほかのすべてのサブカル男女も敵になるのよ。
いったいどういうこと…!?
エリコちゃん、試しに「ドロドロズリンを読んだ」ってTwitterに書いてみなさい。
はい、それくらいなら…。
で、どうするんですか?
待ってなさい、すぐ反応が来るはずよ。
私フォロワー0人だし、そんなすぐには…って、えっ!?
なんかムカつく奴に絡まれてる~!!!!
「◯◯知ってるぐらいでサブカルぶるな」って、また紋切り型の反応が来たわね。
先輩、なんなんですかコイツ!?
今エリコちゃんが見たのが、サブカル界隈を動かす原動力にして最大の害悪…「サブカルエリート主義」の発露よ。
サブカル…エリート!?
サブカルエリート主義とは要するに、変わったものを好きな人間は特別であり、ふつうのものも好きな人間は凡庸であり、凡庸な人間は特別な人間にひれ伏すべし、というファシズムなみの危険思想なのよ。
特別なものを好きだからって、自分まで特別だなんて気が狂ってるわ。どんな特別なものを享受したって、受け手に手柄なんかないのに…。
だけどエリコちゃん、人は誰も特別になりたいのよ。自分のすることで特別になれないなら、自分の価値観や好きなもので特別になるしか道が残されていないの。
何かを好きでいるだけで攻撃されるなんて、納得がいかないわ。
でも、そういうものなのよ。私だってサブカルチャーに没頭していた頃は、メインカルチャーに迎合している人たちを見下していたわ。
サブカルは、よりニッチなものを好きな人間が上に立つ無限地獄なのね…。
特別な人間になるためには、俯瞰されたら負けなの。俯瞰されてカテゴライズされないためには、よりマイナーな方向に流れていくしかないのよ。これは私が書いたサブカルヒエラルキーよ。
な…
何も好きじゃない人間が頂点に立っている!?
「◯◯を知ってるぐらいで…」という理屈を突き詰めていくと、最強なのは誰も知らないものを好きな人間と何も好きじゃない人間になってしまうのよ。
それだったら私は、大衆文化だろうと娯楽だろうと自分の好きなものを好きでいたい…。いちいち俯瞰されことを恐れるのに、疲れてしまったのよ。
先輩…。
私、先輩の一言で目が覚めました。メインカルチャーだろうとサブカルチャーだろうと、自分の好きなものを好きでいられることのほうがずっと大事なんですね。
なので先輩、ワンピース返してください。
(おわり)