インタビューサイトはどうして流行る?

質問サービスの仕組み、ご存知でした?
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こんにちは、小野ほりでいです。

最近、TwitterやSNSにインタビューサイトの質問の答えを貼りつける人をよく見ませんか?

実はあのサイトは、すごい仕組みで運営されているのです…。

 

<登場人物>

エリコちゃん

インターネットでチヤホヤされたい女の子。

 

ミカ先輩

インターネットでチヤホヤされる人に文句をつけたくて仕方がないOL。

 

地球の画像

なんとなく壮大な雰囲気をかもし出すことで、散らかった展開を完璧に収束させてくれる。

 

 

 

 

質問サイト

 

もー! なんなのよー!!

あっ、エリコちゃんの怒号から始まるパターンだ。

先輩! インタビューサイトって知ってます?

存在は知ってるわよ。登録した個人に対して質問できるask.fmのようなサイトでしょう?

それにさっき登録したんですけど…。

 

 

 

めちゃくちゃ荒れてるんですよ!!

ふふふ…ソーシャルビッチ…。

笑いごとじゃないですよ! こちとら住所まで特定されてるんです!

こういうとこに絶対いるのよね、だからどうしたというような個人情報を提示して「自分はここまで知っている」と揺さぶりをかけてくるしょうもない人が…。

ふつうにみんなと交流したかっただけなのに…どうしてこんなことになってしまうの…。

それは仕方ないわよ。同一サービス内で匿名性に差異ができてしまうと、どうしても優位に立つ側が攻撃的になってしまうもの。

匿名のサイ?

そ、その話詳しく聞かせてください!

匿名性の不均衡

さっきも言ったように、同一のネットサービス内で一方は匿名、もう一方はハンドルなり実名というふうに、匿名性の格差ができてしまうと著しく治安が悪くなってしまうのよ。

世界中で利用されているask.fmでも、メンタルの防御力が低い若年層が悪意のある”質問”に晒されて、ちょくちょく自殺しているらしいわ。

こわすぎ…。

 

 

茂みの中から石を投げても誰がやったかバレないように…。反撃の恐れなく誰かを攻撃できるとしたらする、というのが人間の本質なのよ。

 

卑怯やぞ!

匿名にすることで、誰でも気軽に質問できるようになるメリットと同時に、匿名性に甘えて攻撃的な態度を取る人間の発生というデメリットも生まれるの。

 

ただでさえストレス社会を生きてるのに、ネットでまで攻撃されたくないです…。

 

それなら、匿名の質問を受け付けない設定にすればいいわ。その代わり質問はほとんど来なくなると思うけど…。

 

茂みから石を投げるのは卑劣だけど、チヤホヤされたいし誰の悪意も受けたくないという願望も、掃き溜めと化した今日のインターネットではムシがよすぎるのよ。

 

なんだ、設定を変えればいいんですね!

先輩ありがとうございます!

 

 

 

 

 

 

質問ください

 

さて、質問を待つわよ~!

…。

…!

きた!

 

なんかありきたりな質問だなあ…まあいいか。

あ、ほかにも来てるみたい。どれどれ…。

 

 

 

 

急に哲学的になったわ…。

 

 

 

 

 

これでよしと。あれ、まだまだ来てる…。

私ってやっぱ人気者?

 

 

 

 

 

…何よこれ! おでんの具と生きる意味の質問ばっかじゃない!

 

まあいいわ、こういった情報弱者の連中にもちゃんと指導してあげないと…。

 

 

 

 

 

 

これでよし、と…。

あれ、まだ来てる?

 

 

 

 

 

ギャッ!

みんな、どれだけ私のおでんの好みに興味あるの!?

ちょっとかわいそうだけどブロックしちゃおう…。

あれ、まだ新着が…。

 

 

 

 

 

 

ちょっと…どうして、ブロックしたのに…。

ひぃ…。

更新するたびに新着が…!

 

 

 

~!?

私が…生きる意味…。

 

 

 

(バタッ)

 

 

 

 

 

 

 

 

質問? インタビュー?

 

 

気がついた? エリコちゃん。

…先輩?

ちょっと前に同じようなサイトがあったのに、みんなすごいスピードで飽きてしまって…。まったく、ネット民は罪深いわね。

 

同じようなサイト?

私も激ハマリしたわ。エリコちゃんがやったのと同じようなインタビューサイトよ。

 

でも、私たち気付いたの…。インタビューって基本的にほかの何かで実績を残した人がファンサービスとしてやることで、何もやってない素人の私たちがファンサービスなんて外から見たら滑稽なんじゃないの? って。

そしてしだいにインタビューサイトを利用している人を揶揄するものが現れ始めた…「自己承認欲求の塊」「インターネットチヤホヤおじさん」などなど…。

 

苦い思い出とともに、インタビューを受けるという私たちの夢は去った…。

 

でも、似たようなサイトがまた流行っているのはどうして?

 

個人的な推測でしかないけど、「インタビュー」という体裁よりも「質問」という簡素なテーマのほうが、自己承認欲求うんぬんの問題から目を背けられるからじゃないかしら?

 

今のインターネットは、とにかく他人のチヤホヤと承認欲求に噛み付きたがる輩が多いから…。

 

(それは先輩のことでは…?)

エリコちゃん、あなたが受けた質問、誰からだと思う?

 

 

 

 

 

 

哲学科出身のおでん屋さん?

違うわ。機械よ。

 

 

 

 

き、ききき機械!!???????

 

 

 

 

 

厳密に言えばそうね、運営が設定したデフォルトの質問よ。

じゃあソーシャルビッチも?

あれは私よ。

いい、エリコちゃん…。

はっきり言って、みんな他人になんかそんなに興味ないのよ。そして、「興味を持たれる何か」の力は日に日に弱くなっていっているわ。

 

情報の相互性が高まったことで、「何かに対する興味」が占めていた部分のみなの関心が「自分が興味を持たれること」に急速にシフトしつつあるの。

 

そして、興味を持たれたい、特別でありたいという欲求につけこんだ悪知恵の働くやつが「あなたは特別だ、あなたを知りたい」という言葉と引き換えにすべてを奪っていく…。

なんてこと…。

ソーシャルビッチって書いたのは先輩だったのね!

教えてあげるわ、インタビューサイトの仕組みを…。

 

 

 

 

 

登録制質問サイトの仕組み

 

本来は、質問というのはする側にメリットがある行為よ。

でも、聞かれたい、興味を持たれたい、交流したい…そんな欲求を人々がインターネットに向けるようになってからは、反対側の需要が高まった。

 

つまり、質問するためのサービスでなく、質問される側になるためのサービスが必要になった。

 

没個性、興味を持たれる機会が少ない、言いたいことも別にない…。そんな人たちに「聞かれたのだから仕方ない」と自分語りをする言い訳を与えてくれるのが「質問」という体裁だったの。

なるほど…つまり…。

 

 

 

 

 

こうやってみんなにサービスしてあげてたつもりが…。

 

 

 

 

 

 

こんなふうに、「サービスされてあげる」というサービスを受けていただけだった、ということなんですね。

 

そうよ、エリコちゃん。

「興味を持たれたい」という欲求、需要に対して実際にみんなが他人のために用意してある興味の量が少なすぎた…。

 

その「興味」の需要に対する供給の不足を解消するために、機械やサービスがあたかも私たちに興味があるかのようにふるまって、自己満足を促すようになったの。

 

興味を持たれたい…。

注目するよりされる側でありたい…。

人間の欲望は、いったいどこへ向かうのかしら…?

わからないわ…。

でも、ひとつだけ言えるとしたら…。

 

 

 

 

 

 

(おわり)

 

 

 

 

 

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書いた人
小野ほりでい

がんばってイラストも描くライター。人気ポータルサイト「オモコロ」で活動休止中。TwitterIDは@onoholiday