直径2.8cmの小さな芸術!「ペットボトルのふた」に描かれた緻密な風景画が美しい

小さなキャンバスに壮大な風景
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滝が勢いよく流れ落ち、木々が紅葉する秋の風景画。この絵のキャンバスは多くの人が毎日目にする、ペットボトルのふたである。

一般的なペットボトルのふたのサイズは、直径約2.8㎝しかない。そこに描かれる信じられないほど細かい描写の風景に見とれてしまう。

別の作品では、緑のキャップに青々と茂る森の風景が描かれている。キャップの色に合う題材で作品を描いているようだ。

よく見ると動物が3匹います

投稿したのは、画家でもありボトルキャップアーティストとしても活動する西倉ミト/Mito Nishikura(@n_mito0813)さん。今までに80点ほどの作品を生み出してきたという。

夕暮れに輝く大阪城
アクリルガッシュ使用・制作3時間



四季折々の風景を描く

ユニークな創作について、西倉ミトさんに詳しく話を聞いた。

「いっそのこと小さな絵を極めては?」のアドバイスから始まった

「ボトルキャップアーティスト」を始められた経緯を教えてください。

3年前から、キャンバスに絵の具を使って動物や空想の街を描いてきました。その頃から細かな描写が得意で、ハガキサイズの紙に広大な風景画を描いていました。

今年の5月に、東京・渋谷にあるギャラリーのオーナーの方から「細かい絵を描くのが得意なら、いっそのこと小さな絵を極めてしまってはどうか」とアドバイスを頂きました。

その言葉を受け「小さな絵」をどこにどんな風に描こうかと考えている時に偶然、地元のショッピングモールで小学生が作った「ペットボトルキャップのモザイクアート」を見かけたのです。それが今年の6月のことです。

「ボトルキャップを沢山並べて絵を作る手法はよくあるけれど、1個のキャップに絵を描く人は少ないのでは!?」とひらめき、試しに絵の具を使って街の絵を描いてみました。すると、小さくて可愛らしい作品ができたので「多くの方々に見ていただきたい」と思い、作品を描き続けることにしました。


西倉ミトさんのボトルキャップアートは、風景の美しさ以外にも鑑賞のポイントがある。たとえば、記事冒頭で紹介した滝のある風景画の中には、よく見ると手前にアヒルと柴犬の姿が。

向かい合う2匹

この風景をどのように思いつきましたか?

紅葉の名所として有名な、大阪の「箕面の滝」から着想を得ました。

作品の日本らしい雰囲気に合わせて私の好きな柴犬を描き、一匹だけだと寂しいのでアヒルも描き足してみました。「動物を描くことで物語性が出て面白いのでは?」という思いもあります。

緻密な描きこみですが、筆以外の道具も使っていますか?

いえ、筆のみを使用しております。

よく使用するのはナムラさんのビューライナーという筆で、太さは00号です。

あとは筆圧を調節して描いています。

こんな緻密なサイズの絵を、筆だけで描いているとは驚きだ。

西倉ミトさんは、過去に開催したライブパフォーマンスでの作品制作の様子を、動画でも投稿している。

制作にあたって大変なポイントを教えてください。

だいたい1日1個描き、制作時間はに2~3時間ほどかかります。

大変なところは大きく分けると2つ。

1つ目は、普通のサイズの絵以上に、線の太さや点の大きさに気を付けなければならないことです。小さなボトルキャップに描くので、繊細さを追求しなければ野暮ったい印象の絵になってしまいます。

2つ目は、絵具を溶く水分量に注意しなければならないことです。

ペットボトルキャップはプラスチック製なので、絵具を水で薄めすぎるとをはじきます。かといって一切薄めず描いてしまうと絵の具の厚みが出て凹凸ができてしまうため、細かな描写をしづらくなり、見栄えが悪くなる恐れがあります。

きれいに仕上げるには、はじかない程度に水と絵の具を混ぜて描くことがコツですが、私自身、毎回苦戦するポイントでもあります。

巧みな技術で日々制作に励む西倉ミトさん。ほぼ毎日という驚きのペースで作品を仕上げ、画像を自身のTwitterにアップしているので、興味の湧いた方はぜひアカウントをチェックしてみては。

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