ヒモ専用LINEスタンプとして、中高生を中心に絶大な人気を誇るキャラ「ヒモックマ」。そんなヒモックマの魅力が詰まった『ヒモックマまるごとブック』が10月8日、ついに発売された。

それを記念してトゥギャッチでは、ヒモックマの生みの親であるセブ山さんに「ヒモ」についてインタビューを敢行。はたして、セブ山さんの考える「ヒモの生き方」とは…?(編集部)

 

「自分探し」よりも重要なこと

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――まずは『ヒモックマまるごとブック』の発売、おめでとうございます。

セブ山 ありがとうございます。

――セブ山さんは現在もヒモなのですか?

セブ山 はい、もちろんです。ヒモじゃない奴がヒモックマを描いていたら、それはファンの方を騙していることになるので、ちゃんと現役のヒモですよ。 ヒモックマを愛してくださっている方々を裏切るようなマネはしたくないので、誠実にヒモ生活を続けています。

――そもそもセブ山さんがヒモになろうと思ったきっかけは何ですか?

セブ山 みなさんも若いころは悩んだと思うのですが、僕も20代前半に職業選択の岐路に立たされ、「自分には何が向いているんだろうか?」と毎日考えている時期がありました。その考え抜いた先にあった答えが「ヒモ」しかなかったので、僕はヒモを志しました。

――なぜ自分には「ヒモ」しかないと?

セブ山 「自分探し」といった言葉が市民権を得て久しいですが、僕はこの言葉はおかしいと思っています。「自分は何が合っているのか」「何がしたいのか」を見つけることが重要なのではなく、「自分は何が嫌か」「何をやりたくないか」を見極めることが大切だと考えています。

そういった「自分ではないもの」をどんどん捨てていった先に残った形こそが「自分」なんじゃないかと思うんです。そういう意味では「自分探し」ではなく「自分ではないもの探し」のほうが正しいんじゃないかと。

 

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――「自分ではないもの探し」をするとどうなりますか?

セブ山 たとえば、あなたが「野球好き」だったとしましょう。 野球が好きだから、野球選手になる、という選択は正しいのですが、もし挫折してしまったら、途端に人生の目標を見失ってしまうかもしれませんよね。

そんな場合、「野球好き」ではなく「野球にまつわること以外したくない」と自己分析できていれば、たとえ野球選手になれなくても、解説者やコーチ、はたまた野球モノマネの上手い芸人さんや球場ビジネスのコンサルタントなど、他の道をみつけることができると思うんです。

――なるほど。セブ山さんの「自分ではないもの探し」はどうだったんですか?

セブ山 僕の場合は、上司にガミガミ怒られたくない、ノルマに追われたくない、眠気を我慢したくない、そもそも働きたくない、というものでした。

そこに1つでも該当する職業をひとつずつ削っていった先にあったのは…というか、それしか残っていなかったのですが、「ヒモ」という職業だったんです。なので、自分はヒモを目指すべきだと気付き、その道に進みました。

 

アニメやゲームに並ぶ日本の文化にしたい

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――ヒモ専用LINEスタンプ「ヒモックマ」を作ったきっかけを教えてください。

セブ山 「ヒモ」という逃げ場もあるんだよ、ということを多くの人に知ってもらいたくて作りました。

――ヒモが「逃げ場」というのはどういう意味でしょうか?

セブ山 現代人はいろんな場所で追い込まれています。先行きの見えない経済不安や、会社でのストレス、親の介護問題など挙げだしたらキリがないくらい、とにかく今の世の中は逃げ場がありません。

社会全体にストレスが溜まっているので、たった一度のミスでも社会的制裁を受けたり、失業を余儀なくされたりすることもあります。そんな息の詰る状況で、どこにも逃げることが許されず追い込まれた人々は、やがて心を病んでしまうかもしれない…。

だから、追い込まれた人たちが社会に殺されてしまう前に、緊急措置的な逃げる場として「ヒモ」という選択肢もあるんだよ、というのを示したかったんです。

――確かに「ヒモになる」という考え方は、あまり社会では良しとされていませんよね。

セブ山 そうなんです。「ヒモ」という職業は、社会的な評価があまりにも低すぎるために、「ヒモになる」という選択肢に抵抗がある人が多すぎるんです。

そこで、少しでも「ヒモ」という職業の社会的地位の向上に貢献できればと思い、ヒモ専用のLINEスタンプや『ヒモックマまるごとブック』を作りました。

2020年東京オリンピックまでには、アニメやゲームに並ぶ、クールジャパンの1つに挙げられるように、これからもヒモの地位向上を目指してがんばっていきます。

 

発売後の反響は…

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――『ヒモックマまるごとブック』の発売後、反響はありましたか?

セブ山 おかげさまでご好評の声をいただいております。

――具体的にはどのような声でしょうか?

セブ山 「誠意大将軍ポーチ、とても使いやすいです!」「本に書かれていたテクニックを試してみたら、お小遣いが増えました!」などいろいろありましたが、一番嬉しかったのは、直筆の手紙をもらったことですね。

――手紙の内容はどんなものだったのですか?

セブ山 今日はその手紙を持ってきたので、一部抜粋して読ませていただきます。

 

家庭環境のせいでどうしても働けない状況に陥ってしまい退職。そこからなかなか再就職先が決まらず、彼女にメシを食わせてもらわないと生きていけない生活が続いていました。

そんな自分が情けなくて許せなくて、ツラい日々を送っていましたが、たまたま書店で見つけたヒモックマまるごとブックを手に取ってみたところ、衝撃を受けました。そこにはヒモである自分を肯定してくれる言葉の数々。むしろ、もっとヒモになれと後押ししてくれているようにも感じました。

ヒモックマは私にとって救世主です。ヒモックマのおかげで、ヒモでも全然恥ずかしくないんだ、彼女の金でパチスロを打ってもいいんだと気付かせていただきました。本当にありがとうございます。

今ではヒモである自分に誇りを持って、毎日、彼女に金をせびっています。

 

――素晴らしいお手紙ですね。1人のヒモの人生を救ったのですね。

セブ山 いえ、この手紙で救われたのは僕のほうです。彼のメッセージのおかげで「僕がやってきたことは間違っていなかったんだ」と確信できて、目頭が熱くなりました。これからも、1人でも多くのヒモを勇気づけられるように、1人でも多くのヒモをこの世に生み出せるように、がんばっていこうと思います。

――応援しています。本日はどうもありがとうございました。

セブ山 ………。

――どうしました?

セブ山 あの、ちょっと付き合ってもらいたい場所があるんですが、お時間いいですか?

――え?

 

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そう言うと、セブ山さんは私たち編集部を外に連れ出した。

「いったい、どこに行くのだろう?」と思ったが、セブ山さんの真剣な横顔を見ていると、私たちは何も言えず、ただ後をついていくことにした。

 

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「あっ、ありました」

どれくらい歩いただろうか。

1棟のアパートの前で歩みを止めて、その建物を指差すセブ山さん。

どこにでもあるアパートだが、この建物がどうしたというのだろうか?

 

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「僕が初めて女の家に転がり込んで寄生した場所が、ここなんです」

なんとこのアパートは、彼がヒモ人生の最初の一歩を踏み出した思い出の地だった。

止まっていた時間が動き出したかのように、セブ山さんは私たち編集部に、当時の彼女との思い出ヒモ話を語ってくれた。

 

500円玉貯金を毎日こっそり盗んでいた話。

友だちの結婚式があるからと嘘をついて3万円もらい、その金で他の女とデートした話。

暇だったので雨の日に傘を持って駅まで迎えに行ったら、めちゃくちゃ喜んでくれた話。

他の女とデートしていたことがバレて、ハサミを投げられた話(ギリギリ避けられたが、避けたことに対して、さらに彼女がブチギレだした)。

 

どの話も、つい昨日の出来事のように私たちに語ってくれた。

 

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「たぶん、もう彼女はここには住んでいないと思いますが、僕にとってはここがヒモとしての出発点だったので、決して忘れることができない場所なんです」

少し寂しそうな表情だったが、彼の目の奥には情熱の炎が燃えていた。

10年前の出来事は、10年後につながっている。

彼は、まだまだこれからもヒモとして生きていくだろう。

この場所が、そんな彼の原点だ。

 

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「ここが私の…」

 

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「アナザースカイ」

 

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J丁の提供でお送りしました。

 

(おわり)

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セブ山

インターネット文化人類学者。人々がインターネットで織り成す「文化」について研究している。著書に『インターネット文化人類学』がある。TwitterIDは@sebuyama

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