TwitterはSNSじゃない? もがき苦しむ“共感が苦手”な人たちの実態
皆さんこんにちは。Twitterは実はSNSではないというのはご存じでしたか? 全国の村の村一番のホラ吹きが、口を揃えてそう言っているらしいです。それでは、SNSではないとしたらツイッターは何なのでしょうか?
<登場人物>
エリコちゃん
会社でミスしたりTwitterで炎上したりするOL。
ミカ先輩
エリコがミスしたときに「コラ~!」と言う先輩。
典型的ネット民
人の揚げ足をとって批判したり、自分のことを棚に上げたりする。
あらエリコちゃん、珍しく絶好調じゃない。
いや~先輩、真面目にツイートするのをやめて猫とガキに頼るようにしたらいいねの数がうなぎ登りで・・・
ほんとネット民てチョロくて最高~!
なんですけど・・・
けど?
なんか変な人にずっと絡まれてて・・・
まあ、ものすごく慈悲深い人のようにも見えるしめちゃくちゃなことを言ってるようにも見えるわね。
猫はかわいい
赤ちゃんはかわいい
だからいいねが集まる・・・
それじゃだめなんですか?
いい、いいよ。
だからそんな大きくならないで!
2つのツイッター
実は、こういうトラブルが起きるのは珍しいことじゃない。ツイッターは2つの使い方をする人が共存するメディアなの。
ふ、2つの使い方!!????????????????
2つの使い方!?
エリコちゃんはツイッターをどういうサービスだと思ってる?
何って、140字以内でつぶやくという制約付きのSNSでしょ。
そうね、そう思ってる人は多い…だけど本当は違う。ツイッターはSNSじゃなくマイクロブログサービスなの。
え、ブログなの?
じゃあ140字しか書けないのだめじゃん。
・・・だからどうしたんだ、と思うかもしれないけど、SNSとブログでは目的が少し変わってくるわね。
SNS→既存の知り合い、内輪とのコミュニケーション
ブログ→未知のユーザー、外界に向けての発信
そういえばツイッターも、現実の延長で使う人と仮想空間として使う人で分かれると聞いたことがありますね。
こういった「SNSと思ってるユーザー」と「ブログとして作られたシステム」の間で起こるトラブルは多いわ。
たとえば、内輪では冗談で済むイタズラをツイッターで発見されて炎上・・・身内のチャット感覚で画像を無断転載して作者に怒られる・・・
よく見ますね
大雑把に分けて、ツイッターは「ブログ」だと思って使ってる派閥と「SNS」だと思って使ってる派閥がいる・・・ここまでは理解できたかしら。
まあね。
そして、2つの使い方のユーザーが共存していればもちろん求めるツイートの質も変わってくる。
求めるツイートの質?
・ブログだと思ってるユーザーは、不特定多数に向けた発信を求める
・SNSだと思ってるユーザーは、共感を前提としたコミュニケーションを求める
一方は「発信」を求めていて、もう一方は「コミュニケーション」を求めていたらそれはトラブルも起こるわね。
「恋人と過ごして楽しかった」「どこどこのご飯を食べた」「子供の寝顔が・・・」こういった書き込みは、SNSなら「そうですね」と共感を得られる。
でも「発信」ととらえると、「知らんがな」「自慢ですか?」「だからどうしたの?」といった冷たい反応が混じってくる。
それでもツイッターって、つまらないことでも気軽に書き込めるものだと思いますけどね。
そうね。いくら当初の定義がマイクロブログであっても、SNS的に使ってはいけないということではないわ。気をつけないといけないこともあるけどね。
炎上のことだろうなぁ~
共感が苦手なネット民
でもなんか…自撮りとか子供の写真とか、食べたものの写真に変に厳しい人が多くないですか?
そう・・・広いネットには、というかネットには特に“共感が苦手な人”が多いの。
共感に得手不得手ってあるの!?
そうね、例えば・・・
現実世界のコミュニティ…職場でも、学校でも、バイト先でもなんでもいいけど、人間関係のあるところには必ず“共感のサークル”ができるの。
共感のサークルは、「今日何を食べておいしかったよ」「良かったね」「何々を見たんだ」「あれ面白いよね」といった共感ができる人たちで構成される。
でも、何らかの原因でサークルから弾かれる人もいる…他人に共感するのが苦手だったり、共感する対象そのものが変わってる人たちね。
私みたいなサブカル女子ですか?
黙れ小僧
そうして、“共感のサークル”から弾かれた人たちが集う場所…それこそがかつてのインターネットだったの。
核心に迫ってきた・・・!?
共感のサークルから弾かれた人の溜まり場だった時代…インターネットはそれはそれは弱者に優しく、小鳥が飛び交い、誰もが人を思いやる理想の世界だったらしいわよ。
嘘くさいな
しかしある物の台頭により状況は一変する・・・スマートフォンね。
スマホの普及に寄ってそれまで共感が苦手な“暗い人たち”のコミュニティだったネットに明るい人がなだれ込み、空気ががらっと変わった。
恋人ののろけ、家庭自慢、グルメ写真…そういった“共感が得意な人”たちの誇る文化が猛スピードで流入した。
そして、そういったものが苦手なネット原住民たちは必死に抵抗した…こんなものつまらない、自慢だろ、だからどうした…。
しかし多勢に無勢…散り散りになった原住民たちはやがて地下に潜り、現在は暗い洞窟で生活しているそうよ。
洞窟か・・・そう聞くとちょっとかわいそうですね。
おいおい、さっきから聞いてればめちゃくちゃ言いやがって・・・誰が洞窟に住んでるって?
お、お前は・・・!?
共感は善か悪か?
お前は、地下に逃れたはずのインターネットの原住民(性格が暗い)!???
確かにお前たち“共感が得意”なニュータイプのネットユーザーは数で俺たちを圧倒した…
しかし俺たちは消えてはいない。「なんかヤバい奴」としてネットの僻地で細々と活動してきたのさ!
あなただったのね・・・私の写真にケチつけたのは!
やれやれ、子供の写真を貼っていいね稼ぎ・・・下品だと思わないのか?
お前たちいいね乞食は、子供の写真は平気で貼るくせに自分の顔はしっかり隠しやがる…子供に人権はないのか?
私は自分の顔も普通に出すし、あの子供の写真も話題のツイートから無断転載したやつだもん!
よけい悪いよ
ふん・・・人に迷惑をかけてまで稼いだいいねは嬉しいか?
無断転載される方も、されないように工夫しないから悪いんですよ!
痴漢される方も悪いみたいな理屈が出た
それに、どこのどいつも猫、猫…もううんざりなんだよ! 猫にいいねつけるのは!
つけなきゃいいじゃん
つけちゃうだろ! かわいかったら!
お前たちはすぐに「かわいい」みたいな単純に共有できる価値観にすがるんだ…
その先でどれほど恐ろしい文化の衰退が待っているかも考えずに!
そこまでして稼ぐいいねにどれほどの価値がある? フォロワーが増えて何が楽しい?
お前たちが即物的な価値観を蔓延させたせいでツイッターからかつての風情が消えてしまったんだよ!
何だあの、全部のツイートの下に表示されてるRTといいねの表示は・・・! まるで全員がそのために発言してるみたいじゃないか!
ラットレースみたいに数字を追いかけさせて・・・そのどこが“ゆるいつながり”だよ、笑わせるな!
なんでツイッターごときでそんな必死になってるの
そういうたけしの挑戦状的な態度を取ってればいつでも勝てると思うなよ!
うるせえな! 文句あるなら自分で変えてみろよ!
そうよ! 文句ばかりの老害!
老害! 老害!
老害! 老害!
バカめ! 匿名掲示板で鍛えたメンタルに
その程度の罵倒が効くと思ったか!
先輩、こいつ強いです!
メンタルが強いなんて・・・想定外だったわ!
そうだ・・・メンタルが強い相手に対抗する手段がたったひとつある!
フィジカルよ!
ドヒー!
俺は昔のネットに戻ってほしかっただけなのになんで!
あいたた最悪ー!
ん、この路傍に咲く名もなき花は・・・
待て、これは名もなき花じゃない・・・コスモスだ!
こんな誰も見向きもしない道端に健気に咲いて、
踏まれても踏まれても強く咲き誇っている…
そうか、俺は勘違いしていた…いいね乞食を批判しながら本当にいいねのことばかり気にしていたのは俺の方だったんだ。
俺は「昔と変わった」というのを言い訳にして、簡単にチヤホヤされなくなった現状を嘆いただけ…甘えてたんだ!
今日からはこの花のように、誰からも見られていなくても
自分が自分であることを堂々と咲けばいいんだ!
そしてそれを笑うやつがいたとしても、気にすることはない…
なぜなら自分自身を肯定できるのは自分だけだからだ!
ありがとう路傍の花よ、そしてありがとうツイッターよ!
今日この出会いがなければそのことに俺は一生気付かないでいた!
アハハ・・・あ、なんか道端の変なとこに花咲いてる! ウケるー!
パシャパシャ・・・
おい、何してんだよ!
この花はこの辺鄙な場所で必死に咲いてるんだよ!
ウケるー!
ツイッターにアップしよっと!
アハハハ、沢山いいねがついた! やっぱり愚かな者をあざ笑うのはやめられないなー!
あああああああああああ~~~~~~~~!!!
~2ヶ月後~
あの人もすっかり変わりましたね、先輩。
そうね、エリコちゃん。
これはとても喜ばしいことだわ。
ついに彼も“正常”になったのよ。
(おわり)