Webライターが小学校の先生にコツを聞きながら、本気で読書感想文を書いてみた

本気で読書感想文を書いた
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Webライターたちが本気で読書感想文に挑戦!読書感想文、それは夏の小学生の定番課題の一つ。

当時、筆者は「良い文章を書こう」とは露ほども考えず、「~と思いました。」を多用して文字数を稼ぐ、コスい生徒だった。

そんな自分が、あろうことか、現在はWebライターという「書く」仕事に就いている。あの頃よりは「作文力」も向上しているはず。

そこで、トゥギャッターに所属するライター何人かで、『Webライターが本気で読書感想文を書いてみる会』を開催することにした。

Webライターがマジで挑めば、小学生にも負けない読書感想文が生まれるはずだ。生まれるはずだ、と思いました。

➀まずは小学校の先生に取材

さっそく、読書感想文の執筆だ!

…と言いたいところだが、念には念を入れるべく、まずは、改めて読書感想文のコツや執筆にまつわる疑問などを小学校の先生に聞いてみることにした。
我々は大人だからこそ、大人げもなく、徹底的に挑みたい。大人ってそういうもんだから。

 

取材に応じて頂いたのは、新潟大学附属新潟小学校で教鞭を取られる中野裕己(なかのゆうき)(@yuuuuki0430)先生。研究領域は「国語」。現在は可愛い可愛い2年生のクラスを担任されています。

インタビュアーは、この記事の執筆担当・たかやが務めます

 

Q.課題図書ってなにを基準に選べばいいの?

僕、小学生のころは「課題図書ってたくさんあるけど、どれを選べばいいの?」と苦労していました。

理想の話をするなら、課題図書に選定されているすべてを読んで、その中から自分が興味を持った一冊をチョイスするのが一番です。

なるほど。

もちろん、そこまでいかずとも、表紙やタイトル、あらすじを読んで「これなら自分でも書けそうだな!」といった動機で入るのもOKです。

直感で選んでもいいんですね。でも、そうなると「本を選んだ理由」を書くのに苦労しませんか? 感想文に「この本を選んだ理由は、直感です」なんて書くのもどうかと思うし。

いえ、それで全く問題ありません。

なんと…。

例えば、今年の課題図書の中に『おすしやさんにいらっしゃい!』という一冊がありますよね。

 

引用:https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

僕も事前に調べましたが、この一冊はなんか気になってました。表紙も実写だし。


まさに、その「なんか気になる」が大事なんです。

「この本、絵本なのに表紙が写真だ。なんで? どうして?」
  ↓
「…と思ったので、私はこの本を選んでみた」

という書き出しでOKです。

読書感想文だからといって、変に難しく考えなくていいんですね。

はい。本との出会いってとても大事なんです。その子が、本と出会った瞬間に何を感じたか、そういった素直な視点で書かれた文章を読むのは、先生の立場からしてもすごく楽しいんですよね。なぜなら、その子らしさが滲み出てくるから。

たしかに。

ただ、子どもたちはまだ自分のそういった感情を捉える能力に未発達です。だからこそ、子どもたちの「心の揺れ動き」をつかまえて、言葉に直すように促すのが先生の役目です。

Q.読書感想文を書く上で気をつけることは?

小説やマンガでは「起承転結」を意識…といった話がありますが、読書感想文も同じですか?

小学生の場合、そこまでテクニカルなことは重要視しなくてもいいとは思っています。ですが、その中でも最低限、意識してほしいこともあります。「はじめ・なか・おわり」と呼ばれる3段構成ですね。

あー! 懐かしい! 懐かしいですよ、中野先生!

 

習ったなぁ。「はじめ・なか・おわり」


ですが、私が指導する上では、まずは「その子らしい文章」「自分に引きつけている文章」を重要視しています。

「引きつける」とはどういうことでしょう?

自分の生活や実体験に結び付けている…ということです。例えば『おすしやさんにいらっしゃい!』を題材にした場合、「この前、家族でお寿司屋さんに行った時~」のような、その子にしか書けないはじまり方だと面白いですよね。

たしかに「お母さんはマーラー風3貫盛りを頼んでいた」とか具体的なエピソードが書かれてるだけで、良い。

あるいは、この本の表紙では、職人さんがカウンターでお寿司を握っていますよね。そうなると「私は、お寿司ってレーンに乗ってやってくるものだと思っていたからおどろきました」といった感想を書くこともできます。

それは子どもにしか言えない感想ですね。

つまり、本の中に書かれていることから、書かれていないことをどれだけ想像できているか、がすごく大事なポイントだと思います。

僕だったら

「私はまだ時価がつくお寿司屋さんに行ったことがない」

「いつか行ってみたい」

「そのためには様々な企業から仕事の依頼が舞い込んで欲しい」

「PR案件、お待ちしております! マジで!!!」

「……と、この本を読んで思いました」

って書いてもいいと。

良いですね。それはたかやさんにしか書けない言葉ですからね。

最低限の文法は必要だけど、それよりも自分の素直な感情や、自分ならではの経験を綴ったほうがいいのか…。

私のクラスでは、読書感想文について教えるときにそこまでテクニック論を重要視させません。なぜなら、そうなると児童の目的が「良い文章を書く」から「先生の教えを守る」になっていくんですよね。

まずは「自分にしか書けない言葉」を見つけ出すことを子どもたちには大切にしてほしいです。

 

Q.「マス空け」って決まりがあるの?

僕、当時からず~っと疑問だったことがありまして…。「マス空け、どれが正しいの問題」です。

こういうの

正直、当時から「どっちでもよくね~~~!?」と思ってました。国語の先生の前で言うのも失礼なんですが…。

おっしゃる通り。どっちでもいいです。

あれ!? そうなんですか!?

私の教室でも「段落は一マス空ける」とか「タイトルの上は〇マス空ける」のような最低限必要なことは教えています。それは、基準がないと子どもたちも迷ってしまうから。

かと言って、「タイトルの上が〇マス空いてない」の理由で赤を入れることはしていません。

そうなんですね…!

SNSでよく見かける、「『とめ・ハネ』が出来ていないからペケ」のような漢字採点も、少しずつ変化していっているはずです。「骨組みが過不足なく読み取れ、その文字であると判別できれば、誤りとしない」という指針も示されています。

良い時代になってきてるんですね。

もちろんすべての先生に当てはまりませんけどね。でも、私は教員なので先生側の立場に寄り添っちゃうんですけど、先生たちも決して悪意があってやっているわけではないと思うんです。

と言いますと?

やっぱり先生は「教えなきゃ」「育ってほしい」という意識が強くあります。そうなると、「漢字のとめハネ」みたいな“見えやすい部分”に、どうしても評価を置きがちになってしまうんですよ。

ツイッターでよく見かける「理不尽採点」も、先生に「ちゃんと教えたい」という気持ちがあるからこそ生まれるのか…。

「マス空け」いまはそこまで重要視されてないらしいです

Q.いまの小学生ってタブレットで作文を書くの?

いまってクラスにタブレットが配布されてるんですよね? 国語の作文とかもタブレットで書いたりするんですか?

私がいま担当している2年生は、まずはちゃんとした字を書けるようにするために、作文も鉛筆で書きますが、高学年を担当したときは、作文はほとんどiPadで書いてます。

すごい時代ですね……。僕の時代だと、作文を電子機器で書くなんて信じられない。

作文にタブレットをやiPadを用いることのメリットは「推敲がやりやすい」ということがあります。原稿用紙で作文を書いたとして、書き上げた文章を書き直すって、正直かなり億劫じゃないですか。

めちゃくちゃわかります。自分の作文を読み返して「ここ、もう少し直したいな…」と思っても、書き直すのダルいから諦めてました。

多くの人がそうですよね。

あと、消しゴムを使えば使うほど原稿も汚くなって、しまいには用紙が破けちゃって「あ゛あぁぁああ! もォォォ!」となってました。

タブレットだったらそういった修正作業も簡単にできます。面倒な工程が減った分、「推敲」「自己添削」に重きを置けるようになってきた。

もしかして、今の子供って僕たちのころと比べてかなり「作文能力」も高い可能性があるんじゃ…。

そうかもしれませんね。タブレットの導入によって、子どもたちも、自分が書いた文章の誤字・文法のおかしさに気づける力がどんどん身についています。やっぱり、自分で何回も推敲を重ねることは、良い文章を書く上でとても大事なことですから。

僕、いまの小学生と作文対決したら普通に負けるかもしれないな…。

 

読書感想文を書く上で大切なアレコレはもちろん、「マス空け問題」や、最近の小学生はタブレットを使って作文の学習をしている…といった、現場の先生にしか聞けないお話をたくさん伺うことができた。いまの小学生、末恐ろしい…。


中野先生、ご協力いただきありがとうございました!

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